歩行雑草が凄い勢いで走っている。
彼らの先にはまだ幼い子供。
つまり、歩行雑草が群れて子供を追っているという事だ。
理由は解らないが、彼らの攻撃を受けたなら子供はただでは済まないだろう。
いや、子供と言っても探索者として参加している者も居るので一概にそうとは言えないが。
いずれにしろ、木に身を隠して震えている様を見ればあの子に歩行雑草の一撃を耐えられるかどうかは明白だ。
見過ごしてもいいのだが、微妙に寝覚めが良くない。それに、何故追われているのかが気になった。
助けるべく一歩を踏み出した所で、歩行雑草はこちらに気付いたようだ。
雄叫びを挙げて向かって来る。望む所だ。軽くへちり倒してあの子に事情を聞くとしよう。
最近よく夢を見る。
元々私は夢を見ることが多いのだが、今回のは普通のものではない。同じ内容のものを幾度となく繰り返し見るのだ。
同じ内容のものを繰り返し見る、というと予知夢の類が考えられるのだが、予知夢と呼ばれるものにしては内容はあまりにも曖昧で、そしてあまりにも現実離れしすぎていた。
小さな孤島。
数え切れない死体。
血に塗れながら歩く人々。
彼らに混じり壮絶な笑みを浮かべながら死者の血を啜る、私。
普段、私も血液を摂取する。但しそれは他人から直接ではなく、輸血用血液だ。
何故輸血用血液を摂取するのか、についてはここでは置いておく。兎に角、そういう癖がついているのだから。
私自身の意識が正常であればそのような事──誰かを殺し、その血を啜る事は起こり得ない。
この夢の意味する所は何なのだろう。
私という意識の底で吸血鬼としての本能が騒いでいるのだろうか。
吸血衝動は血液を摂取する事で抑えられている筈。では、これは何なのか。解らない。
当面はパーティメンバーや親しい者達にこれを悟られないよう振舞うべきだろう。
ただの夢であればいずれ見なくなる。衝動が抑えられていないのであれば、それは眠っている時だけではなく起きている時にも発現する筈だ。
今は様子を見よう。何も起こらなければ僥倖、何かが起きる気配があれば即座にパーティメンバーに伝えて私をパーティから外してもらう。
ただの思い過ごしであればそれで良し。夢見一つを気にしても始まらないのだ。
何かが起こるとは確定していないのだし、今はただ様子を見よう。大騒ぎして何も無かったらいたずらに引っ掻き回すだけになってしまうのだから。
2007年06月17日
探索手記 -六日目-
posted by Altair at 11:27| Comment(0)
| 探索手記
この記事へのコメント
コメントを書く