2007年06月13日

探索手記 -五日目-

 歩行雑草と野犬を退けて魔法陣へと至る。
 この遺跡の魔法陣はチェックポイントのようなものらしく、「遺跡外で魔法陣の図柄を正確に思い浮かべる事で内部への移動が可能になる」のだそうだ。
 その図柄も、ただ知っているだけではいけないようで、実際に見たものじゃなければ効果が無い。とある探索者は、別の探索者から教わった図柄を思い浮かべてみたが何も起こらなかったそうだ。
 魔法陣というからには魔術的な要素が絡んでいるのだろうが、このような都合のいい魔法は聞いた事が無い。
 ……いやそもそも魔法自体「術者にとって都合のいい」ものなのだが。しかしこの島全域、2000人に届かんとする人数の探索者に対して同時に気付かれずに魔術を行使するなど考えられない。
 唯一考えられる手段は、予めこの島全域に結界を張っておき、それを超えた者に対して自動的に何らかの効果を付与するものだが、そういった大規模なものを行使するのは高位の術師が数人から数十人単位で居なければ難しいだろう。
 と、すると招待者にはそれだけの数の仲間──仲間ではないにしろ、協力者が居るという事になる。
 一時退去時の島の崩壊は術式の崩壊に起因するものだと私は考えていたが、それだけの人数で行使した術がそうそう簡単に崩壊するだろうか?
 もしかしたら、あの崩壊は人為的に起こされた物ではないか?
 何のために?
 不完全な術を完成させるため?

 ──彼らにとって都合の悪い何かを消し去り新たに始めるため?

 …いや、単に舞台として不適当だっただけ、という事かもしれない。
 あの招待状の差出人が、そのような理由で島を崩壊させるとは思えなかった。
 いずれにしろ、私はその崩壊に巻き込まれて暫く不自由な生活をする事になったのだ。
 そのお陰でケイロンさんと知り合い行動を共にする事にもなったのだが、そこはそれ。
 好き好んで痛みを受ける趣味は無い。あの崩壊が無ければ私は自らの身体を自らの手によって傷つけずに済んだのだ。
 あの痛みは容易に思い出す事が出来る。それによってバランスを失った体の不自由さ、そして動く事無く地へと封じられる事に対する恐怖と諦念さえも。

 命があればそれでいい、とする人も居るだろう。それに対して私は否定はしない。
 しかし、私は一時的にせよ体の一部を失ったのだ。何故に崩壊させたのか、納得の行く理由が欲しかった。
 また一つ、招待者に会う理由が出来てしまった。これは僥倖と言うべきか、不幸と言うべきか。
 エルタの地に残して来た「相棒」には申し訳ないが、私にも意地がある。必ず見つけ出して小一時間問い詰めようと思う。


 相棒といえば、彼を探している人が居たようだ。
 エルタでの束の間の休息。彼が語った、「かつて仕えた屋敷のお嬢様」。剣術に長けた、大人の女性。
 そのお嬢様がこの島へとやって来ている。宿屋で実際に顔を合わせるまでは信じられなかった(なにしろメッセージのやりとりをしていても、どこか遠い場所とのやりとりのように思えたのだ)。
 なるほど、確かに剣術には長けているようだ。しかし話の印象では大人しい人だったのだが、彼を探してこんな所までやって来るあたりかなりアグレッシブな一面を持ち合わせているらしい。
 彼女に何かあったら和葉君が心配するだろう。やれる事は少ないが、多少なりともバックアップしていこうと思う。

 …もっとも、やれると言ってもパーティメンバーに作成依頼の取次ぎをする事くらいなのだが。
posted by Altair at 13:10| Comment(0) | 探索手記
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