2009年07月18日

Summer Vacation - 02

ひゃーもう18日だ!幾らなんでも時間空きすぎですね。
そんなわけでこちらから続く最後のサマバケその3でございます。

********

 夜。
 抜けるような青空は、太陽が身を隠した後も続いてくれたようで、満天の星空と少し冷たい月明かりが私達を照らしている。
 小高くなった丘の上に私達は居る。見下ろせば、この島に残った探索者達が思い思いに飲んで食べ騒いでいる様子が見えた。
 重い破裂音と共に、夜空に大輪が咲いた。火によって作られる芸術──花火は、東洋における夏の風物詩だ。その技術は戦闘にも応用できる事から、この島にも『花火師』と呼ばれる者は少なからず居る。
 もう一つ、大輪が咲いた。火で作られた大輪は、月明かりよりも明るく私達を照らし出す。
 傍らで私に身体を預け眠る少女・ミミは、その明かりに僅かに身じろぎをし、再び夢の世界へ入って行ったようだった。
 思えばこの少女ときちんと話したのは今日が初めてだった。機会はあったのだ。だが、タイミングが掴めない等の理由で探索期間中は結局話が出来なかった。

 彼女は、世界の総てを見たいと言う。
 あらゆる所を旅し、あらゆる物を経験し、あらゆる物を見る。
 旅人としての理想。私も旅をしていたので解る。出来るなら、私も多くのものを見、経験し、そしていずれは見知らぬ場所で死ぬ。それが私の理想でもあったのだ。
 死に場所は兎も角として、総てを見たいという言葉には共感出来る。
 しかし、彼女はあくまでも只の少女だ。一人旅をするだけの力も、身を守るだけの技も無い。みすみす命を捨てに行くようなものだ。
 諦めろと言うのは簡単だ。簡単だが、全く面白く無い。彼女の目的、理想を奪うのも本意ではないのだ。
 ならば、どうするか。身を守る、力を得る方法を考えれば良い。
 腕力の無い者でも身を守る術はある。私の本業でもある魔法がそれだ。
 多くの魔法を教えるだけの時間は無いだろうが、目晦ましの術と治癒術、それと数種の攻撃魔法を教えるくらいならば1年もあればどうにかなるだろう。

「私に魔法を……?」

 私の言葉が信じられないと言わんばかりに目を見開き、じっと私を見つめるミミに、努めて笑顔を崩さず頷いた。
 魔法は本来誰でも使えるもの。程度の差はあれど、自らの内に眠る力に気付けるか否かの差でしかないのだ。
 力に気付き、僅かでも形にする。それさえ出来てしまえば、あとは自身の努力次第──似たような話を嘗てフォウトさんにした事があるが、この論は誰にでも当て嵌まる。ミミも例外ではないのだ。

「そう。魔法が扱えれば旅の助けになるでしょう?攻撃魔法があれば賊から身を守れるし、傷ついたなら治癒魔法を使えばいい。それで路銀を稼いでもいいよね。DGには悪いけれど、私はもう少しの間旅を続けたいし……その間に、ね」

 その代わり、時間は余り無いのだからちょっと厳しく教えるよ?
 そう言う私に、望む所と頷く彼女。心の強さが見て取れた。


「しかし、魔法を教えるか。考えたものだね」

 眠る少女の反対側に腰を下ろしたDGが言う。私から見たDGは、ミミの保護者という立場も持っているように思える。
 それ故だろうか、どこか安心したような声色だった。

「……。本当は、ね」

 3人で旅をするのも良いと私は思ったんだ。けれど、それをする訳にはいかないようだから。
 苦笑いを浮かべながら、眠る少女の頭を撫でた。
 そう、3人で旅をする訳にはいかない。ミミが嘗て居た場所を、私が奪ってしまったのだ。
 幾ら心が強くても、この事実は共に居る限り彼女を蝕み続ける。それを知ってか知らずか、彼女は私達と共に旅する事を拒んだ。
 ならば、せめて彼女の旅行きの助けになるよう、出来る事をするしか無いじゃないか。
 私に出来る事は何か。それは魔法を教える事。期せずして、私は弟子というものを持つ事になる。

「……お師匠なんてガラじゃないんだけどなあ」

 苦笑して言う私に、DGはそんな事は無いさと笑った。
 いつもとは違い、肉の身体を持ったDGの笑顔は、落ち着きと安心感を与えるものだった。
 全く自然に身体を寄せ合い──少女を起こさぬよう、DGを抱き寄せる形で──月明かりの下、私達は影を重ねた。
posted by Altair at 15:39| Comment(0) | Intermission
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。