チキレ負けした部分です_| ̄|○l||l
※12/26追記:描写したつもりになったまま、結局描写してないとか何事でしょうね。
遅ればせながら気づいたのでちょっとだけ変更しました。
凛と冷えた夜の空気。
見上げれば、深い深い紺色の闇の中、何百年・何千年も昔の輝きが見て取れる。
視線を移せば、下弦の月が今にも消えそうな細さでその存在を控えめにアピールしていた。
昨年の、こんな冷えた空気の夜も確か聖誕祭で盛り上がっていた。
拠点の中庭、直後に迫った大きな戦いへの景気付けとばかりに大騒ぎをしていた筈だ。
そして、今年もまたその季節がやって来た。
ちらりちらりと舞う雪の中、拠点の中庭ではそれぞれが思い思いに飲み、食べ、喋り、騒いでいる。
今回は、私達9人だけではない。皆各々の知己を呼び、あるいは通り掛かった者に声を掛け、盛大かつ賑やかにパーティが行われていた。
私はというと、少しだけ離れた所に腰掛け、賑やかな声を背に受けつつ夜空を見上げていた。
傍らには、淡く灯る明り。探索を一段落させ、このパーティの準備をしている最中に、カードと共に届けられた──正確には、『いつの間にか荷物に紛れていた』のだが──蝋燭を、私達九人が揃いで持っている宝玉入れの中で灯した、いわばランタンのようなものだ。
聖なる夜に灯して下さい。カードにはそう書かれていた。ならば、この聖夜のパーティに於いてライトアップとして使わせて貰うのが正道だろう。
蝋燭の灯りは、夜空に散る星明りを邪魔しない程度に優しく控えめなものだ。
その控えめな灯りのおかげだろうか。星明りの中、ただぼうっと空を見上げたい、そんな気分に浸っていた。
夜空を見上げ、時折聞こえる会話に笑いを漏らす。そんな平和な夜。
賑やかなのは好きだ。祭とあれば、むしろ率先して賑やかす方だと私は思う。
が、たまにこういう声をBGMに、物思いに耽るという事もしたくなるのだ。
聖なる夜、物思いに耽る女と言えば見栄えは良いだろうが、生憎と私は聖なるという言葉とは正反対の存在だ。
今更それについてどうこう思いはしない。祭は祭だ。そもそも、聖誕祭は収穫祭としての側面もあるのだから。
「何をしているのだね?」
やや掠れた、しかし落ち着いた声。
振り返る。果たして、そこに居たのは予想していた人物だった。
スラリとした長身を黒いスーツで包み、同色のシルクハットを被る。しかし、帽子の下から覗くのは人の顔ではなく、骸骨そのもの──私と同じく、人とは違う時間を生きる者。
どれだけの時間を生きているのかは解らない。本当の名を忘れてしまった、というのだから私よりも長く生きているのだろう。
風貌からは生きているという言葉は合わないかもしれないが、しかしこうして存在している。
初めて会った時、DGと彼は名乗った。社交辞令のような言葉を残し、去って行った。
二度目に会った時、その社交辞令は冗談ではない事を知った。
若い者の吐く軽薄な言葉とは違う、年齢を重ねた者の、経験に裏打ちされた何処までも響く言葉だった。
それから、私は時折彼と言葉を交わしている。
この場にこうして居るのは偶然だっただろうか。それさえも意識する事無く自然に。
私は彼に『特に何も。ただ夜空を見ていただけ』と答える。『ふむ。そうか』と短い応え。
言葉を交わさず、静かな時間。時折、背から聞こえる笑い声。
『やめてください!』というエゼ君の言葉。またアーヴィンさんが何かイタズラをしたのだろう。
銀のカップが差し出された。
ほんのりと湯気が上がり、そして漂う香り。ホットワインだろうか。
「星を見ながら物思いに耽るのも良いが、身体を冷やしかねないからね」
彼も同じカップを手にしていた。
手で包み込むように受け取ると、カップを通して暖かさがじわりと染みる。
そっと一口。酸味と共に、果実酒の芳醇な香りが抜けていった。
喉、そしてお腹へと熱が伝わった。アルコールと相俟って、夜気で冷えた体が温められる。
人とは違う時間を生きる私達には、『メリー・クリスマス』という言葉は似合わない。
だが、そのような言葉を交わす必要は無いだろう。
寄り添わず、ただ静かに空を見る。そういう『聖夜』も、良い。
誰かが誰かを叱る声が聞こえ、そして笑い声が上がった。
2008年12月22日
星降る夜に・補完分(12/26改訂)
posted by Altair at 22:35| Comment(0)
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